デザインは思いのまま!
職人の技術で唯一無二の外壁が可能に
モルタル外壁は、1923年(大正12年)の関東大震災をきっかけに普及しました。
それまでは茅葺き屋根や漆喰など燃えやすい自然素材を使った建材でした。しかし、地震火災によって都心部一面が焼け野原になったことから、不燃性のモルタルへと変わっていきました。
現在の主流はサイディングですが、根強い人気があるモルタル外壁について、わかりやすく解説します。
モルタル外壁の特徴や種類、メリット・デメリット、補修工事、使用できる塗料、塗装時の注意点についてなど、モルタル外壁の塗り替えを検討している方はぜひご覧ください。
モルタル壁とは

モルタルとは、主成分であるセメントに砂(細骨材)と水を混ぜた外壁材です。
建材の上に設置した「ラス下地」と呼ばれる防水紙や網の上にモルタルを塗って下地にし、さらにその上に仕上げ材を塗った壁がモルタル外壁です。
モルタル外壁には、以下のような特徴があります。
- デザインの自由度が高い
- 優れた耐火性
- 高断熱性
- 遮音性
- 継ぎ目のない仕上がり
現在の主流はサイディングボードやACパネルなどのように外壁に貼り付けるタイプですが、モルタル外壁は左官職人がすべて手塗りで仕上げます。
そのため継ぎ目がなく、比較的デザインの自由度が高い外壁にすることが可能です。
職人の技術に左右されるものの、モルタル外壁はまったく同じ外壁はひとつもない唯一無二のオリジナルデザインにできるのです。
モルタル外壁の種類
モルタル外壁は、仕上げ方によって大きく印象が変わります。
- リシン
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0.5mm以下の細かい砂を混ぜた仕上げ材を「スプレーガン」と呼ばれる機械でモルタル外壁に吹き付ける仕上げ方法です。
ザラザラした表面になり、マットな風合いで落ち着いた印象を与えます。
- スタッコ
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1〜3mm程度の砂や軽石を混ぜた塗材を専用の機械を使用して壁に吹き付ける仕上げ方法です。
リシンよりも大きな骨材の入った仕上げ材を厚めに塗るため、リシン吹き付けよりも大きな凹凸がある外壁になります。吹き付けた後にコテで表面の凸部分を押さえて仕上げるコテ塗装もあります。
- 吹付タイル
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1〜2mm程度の「リシンよりも大きく、スタッコよりも小さい」軽量骨材などを混ぜた仕上げ材を、「タイルガン」と呼ばれる機械を使用して壁に吹き付ける仕上げ方法です。
なだらかな凹凸の表面はツルツルとした仕上がりになり、高級感を感じさせます。
- 左官仕上げ
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左官職人がコテを使って直接外壁に仕上げ材を塗って仕上げる方法です。
波模様やくしびき模様などをコテで作り出すことが可能で、手作業ならではの温かみのある外壁になります。
代表的な仕上げ材は「ジョリパット」で、意匠性の高い外壁にできます。
ジョリパットについて詳しくはこちらをご覧ください。
ジョリパット外壁の塗装って?
モルタル外壁と言っても、見えている部分はモルタルではない?

モルタル外壁の仕上げは、基本的に「下地+仕上げ材」の2層構造となっています。
「下地にモルタルを使っている外壁」を「モルタル外壁」と呼び、下地の上に「リシン」や「スタッコ」「ジョリパット」といった仕上げ材を吹き付けたり塗ったりしています。塗料を塗る場合は仕上げ材の上から塗ります。
つまり、「モルタル外壁」といっても外からモルタルは見えず、凹凸デザインなどの模様は仕上げ材によるものなのです。
新築の場合は色の付いた仕上げ材を使い、モルタル+色つき仕上げ材で完成させることもあります。しかしリフォームとして外壁塗装を行う場合には、仕上げ材の上に塗料を塗って美観を整えたり、機能性を回復させたりします。
モルタル外壁のメリット
モルタル外壁には以下のようなメリットがあります。
- デザイン性が高い
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職人が手作業で仕上げ材を吹き付けたり、外壁材に直接塗りつけたりする仕上げ方法のため、凝ったデザインの模様やパターンにできます。
円形やアーチ状など、既製品のパネルでは難しいデザインも可能で、唯一無二のオリジナル外壁が完成します。
手塗り風の仕上げは懐かしさも感じながら、デザイン次第でスタイリッシュな印象を持たせることができ、人気が高まっています。
- 耐火性・断熱性に優れる
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無機質な素材で構成されたモルタルは、非常に燃えにくい外壁材です。
火災時には延焼を抑える効果が見込めるとされ、基準の厚みを満たせば「防火構造」として認められます。
- 継ぎ目がない
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サイディングボードやACパネルと違い、手塗りで仕上げるモルタル外壁には継ぎ目(目地)がありません。
そのため目地を埋めたコーキング材のメンテナンスが不要です。
また、目地によって外壁のデザインが分断されないため、スッキリとした印象の外観に仕上がります。
モルタル外壁のデメリット
メリットがある一方で、下記のようなデメリットもあります。
- ひび割れを起こしやすい
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継ぎ目がない分、揺れや外壁材の伸縮に追従できず、ひび割れが起きやすいといえます。
ひび割れは外壁の劣化や雨漏りに発展しやすいため、見つけたら早めに対処しましょう。
- 汚れやコケ・カビが目立ちやすい
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外壁に凹凸のあるデザインを採用した場合、凹凸部分にホコリが溜まりやすく、汚れが付きやすくなります。
また、コケやカビの胞子も付着しやすいため、防汚性能の高い塗料やコケ・カビを予防する機能をもつ塗料の使用がおすすめです。
- 仕上がりが職人の腕に左右される
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仕上げ材を職人が手作業で吹き付けたり塗ったりするため、職人によって、質感や風合いが異なることがあります。
キレイに仕上がるかどうかは職人の腕に左右されてしまうといえます。
モルタルとコンクリートの違い
モルタルと見た目がよく似ている素材として、コンクリートが挙げられます。
それぞれの違いをまとめました。
モルタル | コンクリート | |
---|---|---|
材料の構成 | セメント+砂+水 | セメント+砂+水+砂利(骨材) |
見た目 | なめらかで細かい質感 | 粗めで骨材が見えることもある |
重さ | 軽め(砂利なし) | 重め(砂利入り) |
強度 | コンクリートよりやや劣る | 非常に高い |
外壁での使われ方 | 外壁の下地として使う | 壁そのものを構造材として使う (打ちっぱなしなど) |
施工方法 | 左官仕上げ、吹付け仕上げなど | 型枠に流し込んで成形(打設) |
デザイン性 | 表面仕上げの自由度が高い(模様・色) | 無機質・重厚感ある打ちっぱなしが人気 |
使用例 | 一般住宅の外壁仕上げ・改修・塗り壁 | ビル・RC住宅・デザイン建築など |
材料に「砂利が入っているかどうか」がモルタルとコンクリートの違いで、「モルタルに砂利を入れた素材がコンクリート」といえます。
コンクリートは重い代わりに強度が高く、無機質なデザインになり、モルタルは強度がやや劣るものの軽く、デザイン性が高いといえます。
モルタル外壁のメンテナンス方法と相場

モルタル外壁はデザイン性に優れ、耐久性が高い一方でひび割れが起きやすく、汚れが付きやすい外壁です。
そのため、劣化症状がみられた場合は業者にメンテナンスの相談をすることをおすすめします。
もしも劣化症状を放っておくと、高額なメンテナンスが必要になってしまうことがあります。
モルタル外壁のメンテナンスには、大きく分けて「外壁塗装工事」と「外壁張替え工事」の2種類があります。
ここでは、モルタル補修の目安となる劣化症状と、「外壁塗装工事」「外壁張替え工事」の工事内容や相場について解説します。
モルタルの補修が必要になる目安
そもそも、モルタル外壁の補修は「外壁がどのような状態になったら」必要なのでしょうか?
モルタル外壁に限らず、一般的に以下のような状態が見られたら補修を検討しましょう。
- 緊急度★☆☆☆☆汚れが目立つ
-
外壁の汚れは、外壁の防水性が落ちている証拠です。
本来、防水性によって汚れを弾いて雨水などで洗い流せるはずが、汚れを弾ききれずに外壁に付着している状態です。
外壁の性能低下は、カビやコケの繁殖、色あせなどを誘発するため、一度業者に確認してもらいましょう。
- 緊急度★★☆☆☆チョーキング現象が起きている
-
外壁を触ると手に白い粉のようなものが付くことを「チョーキング現象」と言い、劣化症状のひとつです。
白い粉は塗料や仕上げ材に含まれる顔料で、塗料の塗膜や仕上げ材そのものが劣化したために顔料が表面に出てきてしまっている状態です。
色あせよりも劣化が進行しているといえます。
- 緊急度★★★☆☆細いひび割れができている
-
幅0.3mm未満の細いひび割れを「ヘアークラック」と呼びます。
外壁表面が平らな場合は急ぐ必要はありませんが、モルタル外壁に多い凹凸のある外壁の場合は、大きなひび割れになる前に業者に確認してもらいましょう。
- 緊急度★★★★☆外壁が浮いたり剥がれたりしている
-
施工不良や水分の侵入、凍害、塗膜の劣化により、塗料や仕上げ材が下地から離れ、浮いたり剥がれたりすることがあります。
モルタル自体が剥がれている場合は、剥がれた部分を撤去した上で左官補修を行います。
- 緊急度★★★★★大きなひび割れができている
-
幅0.3mm以上の大きなひび割れを「構造クラック」と呼び、緊急度の高い劣化状況です。
ひび割れのすき間から雨水が侵入し、雨漏りや建材の腐食に繋がります。
モルタル外壁塗装工事
塗料を使ってモルタル外壁を塗り直す工事で、もっとも手軽なリフォーム工事といえます。
塗料の種類や塗る面積の大きさによって費用が異なり、一般的に高機能な塗料ほど高価格です。
現在主流のシリコン系塗料を使用した場合、120m²あたり70〜100万円が相場金額です。
モルタル外壁張替え工事
既存のモルタル下地を撤去し、新たに下地と外壁材を取り付ける工事です。「張替え」ではなく、「撤去+新設」と表現されることもあります。
モルタル外壁からサイディングにするなど、外壁材が新しくなるため新築住宅のような見た目になります。
部分的な補修では対応できないほど広い範囲での劣化や、雨漏りの発生、築30年以上などの場合に採用されることが多いリフォーム工事です。
一度下地からすべて撤去し新しく外壁を張り付けるため、塗装工事よりも費用は高く、120m²あたり150〜300万円が相場金額です。
なお、モルタル外壁から再びモルタル外壁にする張替え工事は可能ですが、実際にはほとんどありません。
モルタル外壁は左官工事のため人件費が高くなり、総費用が高額になります。
また、地震の多い日本ではひび割れに弱いモルタルは再劣化のリスクがあるため、サイディングや金属外壁にすることがほとんどです。
モルタル外壁の塗料
モルタル外壁を塗装する場合、サイディングなど他の外壁材に使用する塗料と同じものが使用可能です。
ただし、モルタル外壁はひび割れが起きやすいため、柔軟性や追従性の高い塗料がおすすめです。
さらに吸水性が高いため、防水性・撥水性がある塗料を選ぶことも重要です。
また、ひび割れ・高吸水性という特徴があることから、下地処理が非常に重要になります。
モルタルに適した下塗り材を選定しましょう。
モルタル外壁塗装時の注意事項

モルタル外壁を塗装する時は、以下の点に注意しましょう。
- 凹凸の模様やパターンが変わることがある
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凹凸を活かしたデザインの外壁の場合、塗装によって凹凸が消えてしまい、デザインが変わってしまうことがあります。
元のデザインや風合いを残したい場合は、「凹凸のデザインを残したい」旨を事前に業者に伝えましょう。
- モルタルに適した下塗り塗料を使用し、下地処理をしっかり行う
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吸水性が高くひび割れが発生しやすいため、塗料の吸い込みを止め、かつ弾力性のある下塗り塗料を選んで使用しましょう。
また、汚れや古い塗膜などが残った状態で塗装すると早期劣化に繋がるため、念入りに下地処理を行います。
- ジョリパットの塗り替えは専用の塗料を使用する
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ジョリパットやベルアートなど意匠性の高い仕上げ材を使用したモルタル外壁の場合、専用の塗料を使った塗り替えがおすすめです。
一般的な塗料を使うこともできますが、機能性が発揮されず、劣化を早めてしまうことがあります。