一戸建てと集合住宅のメンテナンスの違い
住宅に長く快適に住み続けるために欠かせないのが「メンテナンス」です。
メンテナンスを適切に行うことで、建物の劣化の進行を遅らせることができ、結果的にメンテナンス費用を抑えることにもつながります。しかし同じ住まいでも一戸建てとマンションなどの集合住宅とでは、メンテナンスの費用やタイミング、やり方が異なります。
この記事では、一戸建てとマンションのメンテナンスの違いについて解説します。
一番大きな違いは責任の所在
建物は長い間住み続けていると、雨風や紫外線などにより劣化していきます。そのため住まいを長持ちさせるためには、住宅のメンテナンスが必須です。
- 住宅のメンテナンスとは
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住宅のメンテナンスとは建物の点検、維持、管理、修繕のことをいいます。
一戸建てとマンション、それぞれのメンテナンスについて詳しくみてみましょう。
- 一戸建てのメンテナンス
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屋根・外壁、ベランダ・バルコニー、床下、水回り、建具などを定期的に点検し、修繕が必要なものについては修繕を行います。
また劣化具合に応じて10〜20年に一度、外壁や屋根の塗り替え、ベランダの防水、設備の交換を行う必要があります。
メンテナンス箇所 メンテナンス内容 屋根・外壁 塗装工事 ベランダ、バルコニー 防水工事 床下 シロアリ対策 水回り バス、トイレ、洗面所、キッチン、給湯器、給排水などの修理・交換 建具 玄関ドア、アルミサッシなどの修理交換
- マンションのメンテナンス
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外壁や屋上、配管などの水回り、エントランスや廊下など共有部分について、定期的に保守点検作業を行います。保守点検は法律で定められている項目もあり、エレベーター点検など作業内容によっては資格保有者でないとできないものもあります。
これらのメンテナンスは、個人ではなく入居者全員で構成される管理組合が行います。具体的には、管理組合が管理会社と契約して委託し、マンション管理の専門業者が保守や点検を行うのが一般的です。
またマンションでは、十数年に一度、外壁工事や防水工事、設備関連工事など建物全体の大規模修繕工事を行います。大規模修繕の準備として、建物の状態を確認する建物診断を行い、その結果を受けて工事の時期や範囲、工事仕様などの大規模修繕計画を立てて工事を実施します。
マンションの規模にもよりますが、準備に1〜2年、工事完了まで含めると2〜3年ほどかかる長期工事です。国交省のガイドラインでは12年ごとに行うことが推奨されています。
- 一戸建てとマンションのメンテナンスの大きな違いは?
- それぞれのメンテナンスの具体的な内容をみてきましたが、一番大きな違いはメンテナンスの時期や内容を誰が決めるかです。
一戸建ては自分で決める
一戸建ての場合は、日々のメンテナンスから外壁・屋根の塗り替えなどの大きなメンテナンスまで、すべて自分たちで決めなければなりません。
自分たちで決めるということは、言い換えれば、個人の裁量でどのようにメンテナンスをしていくかを決めることができるので、メンテナンスの自由度が高いともいえます。
例えば予算に応じて劣化が進んでいる箇所を優先して修繕することもできます。しかし何を優先するかは専門的な知識が必要なため、実際は工務店などプロに相談するケースが多いです。
マンションは管理組合が決める
マンションの場合、共用部分のメンテナンスについての決定権は管理組合にあり、個人でメンテナンスを行うことはありません。
一戸建てと違い自由度は低いですが、専門知識が必要なメンテナンスについて個人で決める必要がなく、管理組合が選んだ業者に任せることができます。
メンテナンスの修繕費の違い
メンテナンスの修繕費には、
- 突発的に起こる破損や故障などに対する修繕費
- 外壁や屋根など、建物を維持するため10〜20年程度で行う修繕費
があります。
修繕費について、一戸建てとマンションの違いをみてみましょう。
- 一戸建ては一括払い
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一戸建ては、修繕が必要になるたびに費用を一括で支払います。
設備の不具合や故障、軽微な損傷などが発生したら、その都度、修繕を行います。さらに10〜20年に一度行う外壁や屋根の塗り替え、水回り設備の交換など高額な修繕費も一括で支払う必要があります。
そのため、家を購入したときから十数年後の修繕を見据えて修繕費を貯めておくことが大切です。
- マンションは修繕積立金
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マンションを購入すると、管理費とともに修繕積立金を毎月支払います。
修繕積立金は、十数年に一度行われる大規模修繕に備えて積立てているお金です。共用部分の軽微な損傷については管理費が充てられます。
大規模修繕の際に修繕積立金が足りない場合は、別途一時金の負担金が必要になる場合はありますが、共用部分の修繕に対して個人的に費用を支払うことはありません。
費用相場
一戸建て
建物自体にかかる修繕費 | |
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外壁(塗装) | 100〜150万円 |
屋根(塗装) | 100〜150万円 |
シロアリ対策(防蟻処理) | 15〜30万円 |
ベランダ・バルコニー(防水) | 10〜70万円 |
外部建具や水回り設備 | |
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玄関ドア、サッシ、網戸、シャッターなど | 各5〜30万円 |
トイレ | 20〜40万円 |
洗面台 | 15〜30万円 |
キッチン | 100〜300万円 |
ユニットバス | 100〜250万円 |
給湯器 | 30〜70万円 |
マンション
毎月支払う修繕費 | 平均額 |
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修繕積立金 | 毎月8,000〜20,000円 |
管理費(一部) | 毎月10,000〜20,000円 |
修繕積立金、管理費はマンションの規模により額が異なります。一般的に総戸数が少ないと金額が高く、多いと負担を抑えられます。
管理費は、主に共用部の清掃業務や共用部の電気代、自動ドアやエレベーターのメンテナンス代、植栽の手入れなど日常生活を維持するために使われるお金で、軽微な修繕費にも充てられます。
外壁メンテナンスの方法の違い
一戸建ての外壁メンテナンス
一戸建ての外壁メンテナンスの方法について紹介します。
- 塗装工事
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外壁を塗り替えるメンテナンスです。
外壁全体を洗浄して、ひび割れ、剥離がある部分をシーリング補修し、下塗り、中塗り、上塗りの順で塗料を塗り重ねます。色褪せた外観をきれいにすると同時に、外壁を保護し劣化を防ぐことができます。塗料の色を変えれば外観のイメージを変えることもできます。
また防水性や耐候性に優れた塗料を使用することで、外壁をより長持ちさせることも可能です。
- 重ね塗り工事
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「カバー工法」とも呼ばれる外壁メンテナンスです。
今ある外壁はそのままで、上から新しい外壁を貼り付ける方法です。外壁が二重になるため、断熱性や遮音性が高まるメリットがあります。一方で、新しい外壁分の重量が増えることで耐震性が低くなるというデメリットもあります。
また古い外壁をそのまま残すため、外壁の傷みが放置されると劣化が進む可能性があるので注意が必要です。
- 張り替え工事
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既存の外壁をすべて取り除き、新しい外壁に張り替えるメンテナンスです。
塗装工事や重ね塗り工事に比べ大掛かりな工事であるため、工期が長く、費用も高額です。塗装工事では対応できないほど下地の劣化が進んでいたり、構造体まで劣化が進んでいたりした場合に検討される方法です。
- 補修工事
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外壁のひび割れや剥離が軽度な場合に、部分的な補修を行うメンテナンスです。
築年数が浅ければ補修工事のみで済むこともあります。また定期的に補修工事を行うことで外壁全体の塗装工事を遅らせることもできます。
しかし部分的な補修は、補修をした部分とまわりの外壁の色の差が出る可能性があるので、見た目が気になる人は注意が必要です。
一戸建て住宅に必要なメンテナンス箇所と周期
メンテナンス箇所 | 周期 | |
---|---|---|
外壁 | 外壁塗装 | 約10年 |
目地打ち替え | 5〜10年 | |
屋根 | 塗装 | 5〜15年 |
ベランダ・バルコニー | 防水工事 | 10〜15年 |
床下 | 防蟻処理(シロアリ対策) | 約5年 |
水回り設備 | バス、トイレ、洗面所、キッチン | 約20年 |
給湯器 | 約10年 | |
給水管 | 約30年 |
マンションの外壁メンテナンス
部分的なメンテナンス
- タイル補修
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目視チェックや打音検査を行い、一部のタイルに欠損や浮き、剥離、ひび割れが発生していた場合に、部分的な補修を行います。軽度のひび割れは、樹脂を注入して補修します。
タイルの欠損や浮き、剥離は、下地補修が必要なければ、該当のタイルを撤去し、下地を調整して貼り付けます。
- 下地補修
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- 下地材のひび割れ
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下地にも小さなひび割れがある場合、建物にすぐに影響が出るわけではありませんが、症状が進行しないように、シーリングやフィラーといった材料で埋めて補修します。
- モルタルの浮き
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モルタルは建物躯体のコンクリートの凹凸を平にするために、塗装やタイルの下に塗られている下地調整材です。
地震の影響や、ひび割れからの雨水の侵入などが原因でモルタルが浮いてくることあります。モルタルの浮きを放置するとモルタルごと剥がれ落ちる可能性があります。
モルタルの浮きは見た目ではわからないことが多いので、打診用ハンマーを使い打音を聞き分けて診断し、補修します。
- コンクリートのひび割れ
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コンクリートにひび割れや腐食があると、内部の鉄筋にサビが発生することがあります。鉄筋のサビを放置すると、建物全体の強度が下がる可能性があります。軽度なうちにシーリングやフィラーで埋める補修工事を行い、併せてコンクリートの中性化防止処理を行います。
これによりコンクリート内部の鉄筋や鉄骨のサビの進行を抑え、劣化を防止します。
建物全体のメンテナンス
築年数が浅い場合は部分的な補修で済むことが多いですが、築年数が10年以上経過している場合は、建物全体のメンテナンスが必要です。
マンションの場合、12年を目安に大規模修繕工事が行われます。長期計画を立てて建物全体を修繕する大掛かりな工事で、外壁塗装工事も行われます。
マンションの外壁工事の流れ
- ステップ①仮設工事
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足場の設置を行います。
仮設シート、水平ネット、養生、柵、防犯カメラ、サーチライトなども設置します。
- ステップ②高圧洗浄で外壁を洗浄
- ステップ③下地補修
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目視・打診調査により下地の状態を確認し、マンションの構造的な特徴に適した工法で補修します。
- ステップ④タイル補修
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タイルに浮き、ひび割れがある場合はタイル補修工事を行います。
- ステップ⑤シーリング工事
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外壁のつなぎ目に使われるシーリングの劣化を抑えるために、新しいシーリング材を充填します。
- ステップ⑥外壁塗装工事
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下地と塗料の付着力を検査し、付着力が一定以上であることを確認してから重ね塗りします。
足場が設置されている間に、鉄部(鉄製の扉や階段、メーターボックスの扉など)の塗り替えも行い、サビや腐食の進行を抑えます。屋上や外階段、バルコニーなどの防水工事も行います。
- ステップ⑦足場撤去
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足場やシート、ネットなどを撤去し完了です。