外壁塗装エポキシ系塗料について詳しく解説しています。

金属加工ではメジャーな塗料!
エポキシ樹脂は世界中で使用

エポキシ系塗料は、もしかしたらあまり耳にしたことがないかもしれません。

実は、さび止め塗料の主流になっている塗料で、さまざまなところで使用されています。

多くの性能を持ち、外壁塗装で使用されることもあるエポキシ系塗料について、詳しく解説します。

エポキシ系塗料の特徴

エポキシ系塗料の特徴

エポキシ系塗料とはエポキシ樹脂を主原料とした塗料のことで、正しくは「エポキシ樹脂塗料」といいます。

エポキシ樹脂とは、大きなくくりで考えるとプラスチックの一種と言えます。

そもそも「樹脂」ってナニ?

樹脂とは、基本的に樹木から取れる樹液が空気に触れて固まった植物由来のものを指します。

樹木から取れる天然の樹脂は「脂(ヤニ)」と呼ばれ、「天然樹脂」と呼ばれます。

天然樹脂は植物由来のものが一般的ですが、動物由来のものもあります。

  • 植物由来・・・松脂、漆、天然ゴムなど
  • 動物由来・・・膠、べっ甲など

一方、人工的に作られた樹脂を「合成樹脂」と言います。この「合成樹脂」を一般的に「プラスチック」と呼んでいます。

本来、「樹脂」とは天然樹脂と合成樹脂の総称ですが、工業の分野では「樹脂=合成樹脂(プラスチック)」を指すことが多いです。

エポキシ樹脂はプラスチックなの?

プラスチック素材は、作り方によって以下の2種類に分けられます。

①熱可塑性樹脂

加熱後に溶かして冷却し、成形する。温度によって固体と液体を行き来でき、リサイクルが可能。

(例)ラップやレジ袋など

②熱硬化性樹脂

液体状の樹脂を加熱して硬化させる。1度硬化したものは熱を加えても柔らかくならない。

(例)やかんの取っ手や接着剤など

一般的に「プラスチック」と呼ばれる製品は、ほとんどが①の熱可塑性樹脂です。リサイクルできることが最大の特徴です。

一方、エポキシ樹脂は②の熱硬化性樹脂の一種です。②熱硬化性樹脂は①熱可塑性樹脂よりも耐熱性が高く、耐薬品性や耐候性、接着性、耐摩耗性、硬度に優れています。

よって、エポキシ樹脂は「プラスチックの一種だが、一般的なプラスチック製品とは異なる人工樹脂」と言えます。

エポキシ樹脂がもつ特徴

熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂には、以下のような特徴があります。

  • 高い接着性
  • 耐水性に優れる
  • 酸素も通さない高い耐腐食性
  • 電気を通さない絶縁性
  • 耐薬品性に優れる
  • 紫外線に弱い
  • 衝撃に弱い
  • 低温下での硬化が遅い

これを元に、次項ではエポキシ樹脂を主原料とするエポキシ系塗料のメリット・デメリットを解説します。

エポキシ系塗料のメリット

エポキシ樹脂の特徴から、エポキシ系塗料にはさまざまなメリットがあります。

高い接着性

接着性が高く、金属やコンクリート、ガラス、木材など多くの素材に塗装できます。

そのため、プライマーやシーラーなど外壁材と上塗り塗料を密着させるための「下塗り塗料」として多く使用されています。

また、塗料としてではなく、接着剤として使用されることもあります。

高い耐水性・耐腐食性

水も酸素も通さないため耐水性・耐腐食性に優れており、防さび性能が高いです。

金属への接着性が高いことから、さび止め塗料としても多く使われており、現在の主流になっています。

身近なところでは、釣り竿や船の塗装に使用されています。

耐薬品性・絶縁性

一般家屋の外壁塗装では付加価値としてあまり検討されませんが、耐薬品性と絶縁性にも優れています。

物を溶かす性質を持つ薬品の取り扱い工場で使われたり、硬化後は切削性に優れることから電気部品・電子回路の素材としても使われたりしています。

コストパフォーマンスが高い

耐久性に優れるエポキシ系塗料は、ほかの樹脂塗料と比較すると価格は高めです。

しかし、接着剤として使用した場合の耐用年数は20〜30年と言われ、塗り替えやメンテナンス頻度を考えるとコストパフォーマンスの高い塗料と言えます。

用途が多岐に渡る

上記のように多くのメリットを持つため、外壁や屋根の塗装だけでなく、さまざまな用途に使用されています。

  • 耐水性を活かして水道管の内面コーティング
  • 耐腐食性を活かして防さび鉄筋塗装
  • 耐薬品性を活かして薬品タンクの内側塗装
  • 絶縁性を活かして電気製品の塗装
  • 接着性を活かしてスポーツ用品の塗装 など

エポキシ系塗料のデメリット

メリットが多く、万能とも思えるエポキシ系塗料ですが、デメリットもあります。

紫外線に弱い

耐候性の低さが、エポキシ系塗料の一番のデメリットと言えます。

紫外線に弱く、太陽光に直接当ててしまうと、塗膜表面が劣化して指で触った時に白い粉がつく「チョーキング」が早い段階で発生します。

また、塗膜が黄色っぽく変色してしまう「黄変」も起こります。黄変が起きると外壁が色あせた感じになってしまいます。

そのため、エポキシ系塗料を外壁塗装に使用する場合は必ず塗装表面を保護する「トップコート」を使用します。トップコートは紫外線に対して高い耐久性をもつものを選びましょう。

衝撃に弱い

靭性(じんせい)が低いため衝撃に弱く、脆く壊れやすいと言われています。

「靭性」とは、材料の粘り強さのことです。靭性が高いと衝撃によって破壊されにくく、耐久性が高くなります。

靭性を高めるために、ゴム状の物質やポリウレタンなどほかの物質を添加しています。

低温下では硬化に時間がかかる

エポキシ系塗料は5℃以下の低温では硬化に著しく時間がかかります。

ほかの塗料も基本的に5℃以下の寒冷地では使用が制限されますが、エポキシ系塗料は特に硬化が遅く、硬化促進剤を添加しても変わらないことがあります。

5℃以下のような極端に気温が低い場合は、施工自体を見送りましょう。

外壁塗装における樹脂系塗料の違い

外壁塗装における樹脂系塗料の違い

外壁塗装で良く使用される樹脂系塗料は、大きく分けて以下の4種類があります。

  • アクリル系塗料
  • ウレタン系塗料
  • シリコン系塗料
  • フッ素系塗料

この4種類にエポキシ系塗料を加え、特徴を比較しました。

樹脂系塗料比較表

耐用年数 メリット デメリット
アクリル系塗料 3〜6年
  • 安価
  • 種類が多い
  • 耐久性が低い
ウレタン系塗料 6〜10年
  • 密着性が高い
  • 種類が多い
  • 耐候性が低い
シリコン系塗料 7〜13年
  • コストパフォーマンスが高い
  • 種類が多い
  • 密着性が低い
フッ素系塗料 15〜18年
  • 高耐久性
  • 仕上がりが良い
  • 高価
エポキシ系塗料 20~30年
※接着剤として使用した場合
  • 接着性が非常に高い
  • 耐水性、耐腐食性に優れる
  • 耐候性が低い

上記樹脂系塗料の特徴を、外壁塗装の観点からそれぞれ解説します。

アクリル系塗料

樹脂系塗料の中で最も安価でカラーバリエーションも豊富です。しかし耐久性が低いため、コストパフォーマンスは高いとは言えません。

短期間で取り壊すような建物や、頻繁に塗り替えを行いたい場合の外壁塗装に向いています。

現在では、プラモデルの塗料や、DIYでの家具の塗り替えなどに多く使用されています。

ウレタン系塗料

ウレタン系塗料には「ポリウレタン樹脂塗料」と「アクリルウレタン樹脂塗料」の2種類があり、現在のウレタン塗料の主流は「アクリルウレタン樹脂塗料」です。

シリコン系塗料が世に出る前の外壁塗装の主流は、ウレタン系塗料でした。

密着性が高いため扱いやすく、光沢が出て高級感のある美しい塗膜になります。一方で紫外線に弱く、耐候性が低いため劣化の進行が早まります。

現在では高級家具やフローリングの塗装など、紫外線の当たらない場所・ものへの使用が多いです。

シリコン系塗料

現在の外壁塗装で仕上げ用として使用される塗料の主流で、価格と性能のバランスが良くコストパフォーマンスに優れています。

定番塗料のためカラーバリエーションが豊富で、防汚性能の高さと紫外線に対する高耐候性も魅力のひとつです。

ただし、雨や汚れを弾く撥水性が高いため密着性が低く、塗装には技術が必要です。

フッ素系塗料

樹脂系塗料の中では最高級と言われています。

耐久性の高さと仕上がりの良さから、東京スカイツリーやレインボーブリッジなどの有名大型建造物にも使用されています。

耐候性や耐摩耗性、親水性など数多くの性能を持つメリットがある反面、価格が高価で初期費用がかかるというデメリットもあります。

しかし、耐用年数が長いため塗り替えの回数はほかの塗料よりも少なく済み、長い目で見ればメンテナンスコストは低くなります。

エポキシ系塗料

ガラスや木材、コンクリートなど多くの素材と接着性が非常に高いため、下塗り塗料として使われることが多いです。

硬化後は水や酸素を通さないため耐腐食性が高く、さび止め塗料としては主流になっています。

さらに、耐薬品性、絶縁性など一般的な塗料とは異なる特徴を持つため、薬品タンクの内側塗装や絶縁体の塗装にも使用されるなど用途は多岐に渡ります。

一方で、紫外線に弱いため外壁塗装の仕上げ用として使われることは多くありません。使用する場合には、紫外線に強いトップコートを塗布する必要があります。

ケントリファイン

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