外壁塗装で3回も「塗り」の工程があるのはナゼ?理由を解説
外壁塗装では、塗料の「塗り」の工程が3回あります。
一般的に「3度塗り」と呼ばれますが、どのような違いがあるのでしょうか。
ここでは外壁塗装・屋根塗装の工事の流れから3度塗りの目的、豆知識を紹介します。
外壁塗装・屋根塗装工事の流れ
同時に屋根塗装の工事を行う場合、上記⑤〜⑦を「屋根の⑤〜⑦」「外壁の⑤〜⑦」の順番で施工します。
足場の組み立てから高圧洗浄等塗装の準備、塗装、足場の解体まで、一般的に10~14日かかります。
途中で雨や雪が降るなど天候不順があると、さらに工期が延びることがあります。
- 塗装の準備・・・雨でも施工可能
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- ①足場の組み立て
- 職人が安全に塗装作業を行えるよう、鉄パイプや金属の土台を使って建物の周りをぐるっと囲います。さらに、塗料が近隣住宅に飛び散らないよう、足場のまわりを飛散防止シートなどで覆います。
- ②高圧洗浄
- 外壁にたまった汚れやほこりなどを、水や専用の薬剤を使用して洗浄します。
- ③下地処理
- 外壁にできたひび割れを補修したり表面のサビを落としたりして、新しい塗料が外壁材に密着しやすくなるよう平滑な面にします。
- ④養生
- ドアや窓といった塗装を行わない部分を、ビニールなどを使って養生します。そのほか、植木鉢や置物などを移動させることもあります。
- 塗装・・・雨が降った場合は施工中断
- 塗装工程の⑤下塗り、⑥中塗り、⑦上塗りを合わせて「3度塗り」と呼びます。
塗装については次項で詳しく解説します。
- 解体・・・雨でも施工可能
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- ⑧最終チェック
- 塗装が終了すると、塗料のはみ出しや塗り残しなどがないか、足場を解体する前にチェックを行います。
- ⑨足場解体
- チェックが完了すると、足場を解体します。解体後は付近を掃除します。
- ⑩完了
- <掃除が終わると施工完了です。保証について、再度業者に確認しておきましょう。
なぜ3回塗るの?3度塗りの目的と機能
下塗り・中塗り・上塗りを合わせて「3度塗り」と言います。
「3回も塗るの?」と不思議に思うかもしれませんが、それぞれ目的と機能が異なります。
- 下塗り
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下塗りは、外壁に色を付けるための塗装ではありません。
外壁材に直接塗る下塗りは、以下の目的で行います。
- 傷んだ外壁材を補修し、平滑な面にする
- 中塗り・上塗り用塗料と外壁をしっかり密着させる
- 中塗り・上塗り用塗料をキレイに発色させる
そのためには、以下のような機能が必要です。
- 外壁材の凸凹を補修し、平らにする
- 中塗り・上塗り塗料が外壁材に染み込まないようにする
- 下地の色が透けるのを防ぐ
また、下塗りをすると中塗り・上塗り用塗料が外壁材に染み込むことを防止できるため、塗料代の節約にもつながります。
下塗りは「塗装の土台」ともいえるとても重要な塗り工程です。
下塗りを行わずに仕上げ用の塗料を塗ってしまうと、外壁材と塗料がしっかり密着せず早期剥離の原因になったり、塗料の耐用年数よりも早い段階で劣化症状が発生したりしてしまいます。
さらに、仕上げ用塗料が外壁材に染み込むことで塗りムラができ、仕上がりが悪くなります。
下塗り塗料は外壁材の種類や状態によって、「シーラー」や「プライマー」など使える種類が決まっています。さらに、中塗り・上塗り用塗料との相性の良し悪しもあります。
中塗り・上塗り用塗料によっては、使用する下塗り用塗料が指定されていることもあります。「できあがり時には見えない部分だから1番安いもの」とおろそかにしないようにしましょう。
外壁塗装の「下塗り」効果について詳しくは、こちらをご覧ください。
外壁塗装の「下塗り効果」を徹底解説
- 中塗り
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中塗りは、「1回目の仕上げ塗り」として実施します。
下塗りと異なり、上塗り用塗料と同じ塗料を使用することが多く、「上塗り2回」と言われることもあります。なお、一部の高級シリコン塗料やフッ素塗料、無機塗料では専用の中塗り塗料があります。
塗り回数の確認や塗り忘れ防止のために中塗りと上塗りの種類を変えることもあります。
中塗りは、以下の目的で行います。
- 最後の上塗りを美しく仕上げる
- 塗りムラをなくす
- 塗料の機能を発揮させる
中塗りの段階では、下塗り塗料が中塗り塗料を少し吸い込んでいる状態のため、発色や光沢などはあまりキレイには見えません。
中塗りを行い、最終的に塗装に厚みを持たせると、外壁が発色よく仕上がり、塗料の機能もしっかり発揮されます。
なお、最近では「中塗り不要」を謳う塗料もあります。
- 上塗り
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上塗りは塗装の仕上げとして、以下の目的で行います。
- 塗料の機能を強化する
- 美しく仕上げる
上塗りによって塗膜の厚みが確保され、風雨や紫外線などから外壁をガードするという塗料の性能が十分に発揮されるようになります。
また、上塗りでは塗料が外壁や下塗り塗料に吸い込まれることがないため、塗料の持つ本来の色やツヤを表現でき、外壁が美しく仕上がります。
中塗りでの塗りムラや塗り残し、気泡なども上塗りで補正します。
中塗り・上塗りでは一般的に同じ塗料を使用しますが、それぞれで乾燥時間が決められています。
しっかり乾燥させずに上塗りを行うと、中塗り時に残っていた水分によって塗膜の膨れや剥がれなどの不具合が発生してしまいます。
塗装時の天候にもよりますが、基本的な乾燥時間はメーカーのパンフレットなどで確認できます。
「塗装(半日)」など、見積もり時に塗装工程が不自然に設定されている場合は業者に確認しましょう。下塗りから上塗りまで、塗装・乾燥時間含め目安は6〜7日間です。
外壁塗装の3度塗り豆知識
中塗りと上塗り、合わせて1回ではダメ?
「中塗りと上塗りで同じ塗料を塗るのなら、厚めに塗って1回で済ませてもいいのでは?」と思う方がいるかもしれません。
しかし、「中塗り不要」と指定されている塗料でなければ、別々に分けて塗りましょう。
中塗りと上塗りでは、同じ塗料を使用していても役割が異なります。
- 中塗り・・・上塗り塗料が下地に吸い込まれることを防ぎ、発色やツヤ、塗料の機能などを十分に発揮させる
- 上塗り・・・塗料本来の発色やツヤ、機能を発揮し、外壁を美しく仕上げる
塗料には粘度があるため、中塗りを省略して厚めに上塗りを行うと塗りムラができたり、乾燥後に小さな穴がたくさんできたりして美しい仕上がりになりません。
また、塗る回数を減らすと塗膜の厚みが足りず、防汚性など塗料の持つ機能が十分発揮されません。その結果、耐用年数よりも早めに劣化するリスクがあります。
もしも「塗り回数を1度減らせば、塗料代が節約できますよ」などと話す業者の場合、優良業者ではない可能性があるため注意してください。
外壁材によっては4度塗りになる場合も
外壁塗装の基本は「3度塗り」ですが、下記のような外壁の状態によっては4度塗りや5度塗りになることもあります。
- 外壁材の傷みがひどい
- サビが発生している など
基本の3度塗りよりも多く行うのは、下塗りです。
外壁材の傷みがひどかったり、外壁材が下塗り塗料を吸い込みやすかったりする場合、1回の下塗りでは中塗り用に外壁の状態を整えることができません。
そのため複数回下塗りを行い、「中塗り塗料と外壁材の密着力を向上させる」「中塗り・上塗り塗料の機能を十分発揮させる」ことができるようにします。
下塗りを2回以上行うと、「下塗り(2回以上)→中塗り→上塗り」の4度以上の塗り回数になります。
通常、下塗りを何回行うかは現場の職人さんの判断になります。
1回でいいのか、2回以上の下塗りが必要なのか正しく判断してもらえるよう、経験豊富な腕のいい塗装職人に依頼しましょう。
外壁塗装の「下塗り」効果について詳しくはこちらをご覧ください。
外壁塗装の「下塗り効果」を徹底解説3回以上塗ったらどうなる?
塗膜の厚さが確保されることで塗料の機能が十分発揮されるようになりますが、中塗り・上塗りの回数をいたずらに増やしても塗料の機能が向上するわけではなく、耐久性もあがりません。
中塗り・上塗りの回数を増やすと、場合によっては壁内の湿気を外へ逃がす「透湿性」が失われてしまいます。
日本は湿気の多い国のため、湿気が壁内に余分に留まってしまうと外壁材の腐食や塗装の不具合を引き起こすリスクが高まります。
なお、塗料によっては中塗り・上塗りの回数が合計2回ではないものもあります。
透湿性を保持しつつ、防水性や防汚性などの機能を発揮するためには、塗料の決められた塗装回数をしっかり守りましょう。
また、塗料の機能を確保するためには、塗り回数のほかに「塗布量」を守ることも大切です。
塗布量とは、「塗装面に塗る塗料の量」のことです。
塗布量も塗り回数と同様、塗料によって決められているため、こちらもしっかり守ることが重要です。
3度塗りってどのくらいの時間がかかる?
3度塗りの工程では、「塗料を塗る時間」と「乾燥させる時間」がかかります。
塗料をしっかり乾燥させると余分な水分や油分が蒸発し、外壁をコーティングする塗膜が形成されます。
形成された塗膜の上にさらに塗料を塗り重ね、同様に乾燥させると塗膜の層ができあがります。
この塗膜の層により、外壁を雨や紫外線などから守れるようになります。
塗料が乾燥するまでには、季節によりますが4〜16時間の「雨が降らない時間」が必要です。乾燥工程の間に雨が降ると、その分工期が延びます。
また、夏よりも冬の方が乾燥時間は長くなる傾向があります。
乾燥時間は塗料によって決められており、その時間を守らないと耐用年数よりも早く劣化したり、塗膜が剥がれたりしてしまいます。
乾燥時間は塗料のカタログやメーカーのホームページに記載されているので、事前打ち合わせの段階で工程表を確認しましょう。
半日で塗装工程が終了する予定になっていたり、乾燥時間に1週間も取っていたりなど、極端に短い・長い場合には注意が必要です。